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2025年05月08日
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3.訪問
2014年10月16日
帥(そち)の宮は、思いがけぬうちにそっとお訪ねにとお思いになり、
昼からご準備なさり、日ごろ文(ふみ、手紙)を取り次いで持たせている右近の尉(うこんのじょう)をお招びになり
「忍んで、さる所へ行こうと思うが」
とおっしゃると、ああ、あそこだなと察する。
身分を隠した普通の牛車でそっとお出でになり、
「来ましたよ」 とおっしゃるので、
どうしたらよいだろうと困惑するけれど、「おりません」と申し上げることもできず、
さきほど昼に文のお返事を差し上げたばかりなので、こうして家にいるのに帰っていただくのも
申し訳なく、
ではお話だけでもいたしましょう と思い、
西の妻戸に藁座を差し出して座っていただく。
(女性は顏が言えないように御簾のなかにいる)
世の人の言うように、並みの方ではなく、ほんとに優美な方であられました。
いろいろお心遣いもされ、お話をさまざまにするうちに、
月が上がって参りました。
「月が明るいですね。人間も古めかしいし、いつも奥屋敷にいる身ですから、こういう明るい
ところには慣れておりませんから、居心地わるく感じます。そちら(御簾のなか)に座らせて
いただけないでしょうか。いままでやこれからあなたがお会いになるような男とは
違いますから。」
とおっしゃるので
「まあ、妙なことを、今宵だけお会いしているものと思っておりますものを。いったい
今までやこれからもないでしょうに。」
などと、とりとめもないことなどお話しているうちに、だんだん夜が更けて参りました。
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